補聴器 【その6】 聴力の低下は抑えられるか?

聴力の低下は抑えられるか?  

脳がだまされると正しく聞こえない?

  一般に音声は耳で聞くものと思われています。しかし、耳は音の刺激を

脳に送る機能を果たしているだけなのです。人は自分に必要な情報だけを

聞き分けて取り入れ、不要な情報は切り捨てています。これは「選択的聴取」

という脳の働きによるものです

 ひとつの実験があります。正常な聴力の人に、「ガ」と発音した口の動きを

テレビ画面で見せながら、「バ」という声を聞かせるのです。そして、何と

聞こえたかと尋ねると、ほとんどの人が「ダ」と答えます。

 これは耳が正解である「バ」という音を聞き取っても、目が「ガ」だと伝えるため

脳が混乱して「ダ」という音だと判断するためです。これは「マガーク効果」と

呼ばれる現象で、聴力が正常でも必ずしも正確に音を聞き取れるわけではない

事を示す実験です。

聴力は「脳力」で補える

 逆に言えば、聴力が衰えても予測や類推、想像力などをフルに活用すれば
日常会話程度の聞き取りは不自由なく行えるといえます。例えば、

頑固親父(ガンコオヤジ)の「コ」の部分だけが聞こえなくても、ほとんどの人が

「ガンコオヤジ」と聞き取ります。脳が音声の不備を想像力で補う能力、これ
が「聴能」です。

  聴能は人とのコミュニケーションの中で培われます。年を取って聴力が衰

えた時困るのは、聞こえにくくなる事そのものよりも、人とのコミュニケーションを

避けてしまう事にあります。相手に気を使って、意思の疎通を図るのが面倒になる。

こうなると、聴能は伸びなくなってしまいます。聞こうという意欲を持って音や

言葉を聞く。こいった態度をとるだけで、実際以上の音を聞き取ることができるの

です。